ネットワークを構成する主な機器とその役割
企業ネットワークは、複数の種類の機器が役割分担しながら組み合わさって成り立っています。それぞれの機器がネットワークの中でどのような役割を担っているかを整理します。
ルータ(router)
異なるネットワーク(サブネット)どうしを接続し、宛先IPアドレスに基づいて経路選択(ルーティング)を行う機器です。企業のLANとインターネット(WAN)の境界や、複数の拠点間の接続などで使われます。
L2スイッチ/L3スイッチ(switch)
- L2スイッチ:MACアドレスをもとに、同じVLAN内でフレームを転送する機器です。詳しい転送の仕組みは別記事「スイッチングに関する概念」で扱います。
- L3スイッチ:L2スイッチの機能に加えて、IPアドレスに基づくルーティング機能もあわせ持つ機器です。VLAN間のルーティング(インターVLANルーティング)を、独立したルータを使わずにスイッチ自体で行える点が特徴です。
無線アクセスポイント(AP:Access Point)
無線LANのクライアント端末を有線ネットワークへ接続するための機器です。単体で動作する自律型(autonomous)APと、後述のWLCに集中管理される軽量(lightweight)APの2種類の運用方式があります。
ワイヤレスLANコントローラ(WLC:Wireless LAN Controller)
複数の軽量APを一元的に管理する機器です。SSIDの設定、無線チャネル・電波出力の自動調整、クライアントのローミング制御などを、WLCが集中的に行います。AP1台ずつを個別に設定する必要が無くなるため、大規模な無線LAN環境で広く使われます。
ファイアウォール(firewall)
あらかじめ定義したルールに基づいて、ネットワーク間を通過する通信を許可・拒否するセキュリティ機能、またはその機能を実装した機器・ソフトウェアです。多くの場合、社内ネットワークとインターネットの境界に設置されます。
サーバー(server)とエンドポイント(endpoint)
- サーバー:ファイル共有・Webサービス・認証(Active Directory等)といった機能を提供する機器です。
- エンドポイント:PC・スマートフォン・IP電話など、ネットワークの末端でユーザーが直接利用する端末を指します。
ネットワークトポロジアーキテクチャの特性
トポロジとは、ネットワークを構成する機器どうしの接続構成(配置・つながり方)のことです。目的や規模に応じて、いくつかの代表的なアーキテクチャが使われます。
3層階層モデル(コア/ディストリビューション/アクセス)
企業のキャンパスネットワーク(オフィス内等)で伝統的に使われてきた設計で、役割の異なる3つの層でスイッチを配置します。
- コア層(core layer):ネットワーク全体の中心として、高速な転送に特化します。ポリシーの適用は最小限に抑え、できるだけシンプルかつ高速に転送することに専念します。
- ディストリビューション層(distribution layer、集約層):複数のアクセス層をまとめ、ルーティング・VLAN間通信・ポリシー適用(アクセス制御等)の境界となる層です。
- アクセス層(access layer):エンドポイント(PC等)やAPが直接接続される、ネットワークの末端の層です。
2層階層モデル(コラプストコア:collapsed core)
小〜中規模のネットワークでは、コア層とディストリビューション層の役割を1つの層に統合した2層構成(コラプストコア)もよく使われます。層が1つ減る分、構成がシンプルになりますが、3層構成に比べて拡張性ではやや劣ります。
スパインリーフ(spine-leaf)
主にデータセンターで使われるトポロジです。リーフ(leaf)スイッチにサーバー等を接続し、すべてのリーフスイッチをスパイン(spine)スイッチへ接続します。どのリーフ間の通信も必ず1つのスパインを経由するため、通信経路のホップ数が均一で、東西方向(サーバー間、east-west)のトラフィックが多いデータセンターの通信パターンに適しています。
WANトポロジ
拠点間を結ぶWAN(広域ネットワーク)の接続形態にも、いくつかの代表的なパターンがあります。
- ハブアンドスポーク(hub-and-spoke):中心となる1拠点(ハブ)に、他のすべての拠点(スポーク)が個別に接続される構成です。回線数を抑えられますが、スポーク間の通信は必ずハブを経由します。
- フルメッシュ(full mesh):すべての拠点どうしが直接接続される構成です。冗長性・通信効率に優れますが、拠点数が増えると必要な回線数が急激に増加します拠点数を
nとすると、フルメッシュに必要な回線数はn(n-1)/2本になります。拠点数が多い場合は現実的なコストに収まらないことが多く、その場合はハブアンドスポークや、一部の拠点間だけを直接結ぶ「部分メッシュ(partial mesh)」が選ばれます。[1]。 - 部分メッシュ(partial mesh):フルメッシュとハブアンドスポークの中間で、重要な拠点間だけを直接接続し、それ以外はハブ経由にするなど、必要な箇所だけ冗長性を持たせる構成です。
オンプレミスとクラウド
- オンプレミス(on-premises):サーバーやネットワーク機器を、自社の建物・データセンター内に設置して運用する形態です。
- クラウド(cloud):AWS・Microsoft Azure・Google Cloudなど、クラウド事業者が提供するデータセンター上のリソースを、インターネットや専用接続などのネットワーク経由で利用する形態です。
多くの企業では、両者を組み合わせたハイブリッドクラウド構成(一部のシステムはオンプレミス、一部はクラウド)も広く使われています。
SOHO(Small Office/Home Office)
自宅や小規模事務所向けの小規模ネットワーク環境を指します。家庭用ルータのように、ルータ機能・スイッチ機能・無線AP機能が1台にまとめて内蔵された機器が使われることも多く、企業向けの階層モデルよりシンプルな構成になりやすい点が特徴です。
補足
- 拠点数を
nとすると、フルメッシュに必要な回線数はn(n-1)/2本になります。拠点数が多い場合は現実的なコストに収まらないことが多く、その場合はハブアンドスポークや、一部の拠点間だけを直接結ぶ「部分メッシュ(partial mesh)」が選ばれます。 ↩