Ciscoの無線アーキテクチャ
無線LANをどのように設計・運用するかによって、AP(アクセスポイント)とWLC(ワイヤレスLANコントローラ)の役割分担にはいくつかの方式があります。

自律型(autonomous)アーキテクチャ
各APが単体で完結して動作するアーキテクチャです。SSID・セキュリティ設定・VLANの割り当てなどを、AP自身が個別に保持します。小規模な環境ではシンプルですが、AP台数が増えると、電波(RF)の管理やクライアントのローミング制御を一元的に行えず、管理の手間が急激に増える課題があります。
集中型(センターMAC/split-MAC)アーキテクチャ
現在の企業向け無線LANで広く使われる方式です。軽量AP(lightweight AP)とWLC(Wireless LAN Controller)が役割を分担します。
- APが担う処理:ビーコン送信、暗号化・復号、実際の無線フレームの送受信など、即時性が求められるリアルタイムの処理
- WLCが担う処理:認証、RF(電波)の最適化、ローミングポリシーの管理など、ネットワーク全体の管理系の処理
APとWLCの間は、CAPWAP(Control And Provisioning of Wireless Access Points)というプロトコルでやり取りされ、制御用にUDPポート5246、データ用にUDPポート5247が使われます。CAPWAPを使うことで、APとWLCが同じL2セグメントに無くても(L3で離れていても)通信できます。
クラウドベース(cloud-based)アーキテクチャ
APの設定・監視・可視化を、オンプレミスの物理アプライアンスではなく、クラウド上の管理ダッシュボード(例:Cisco Meraki)で行う方式です。クラウド側では管理ダッシュボードを通じた設定や監視を行い、クライアントの無線データ通信は通常、現地のネットワークへ転送されます。ただし、VPNトンネルなどを構成する場合は、通信を別の拠点や集中装置へ転送することもあります。複数の拠点に分散した環境を、拠点ごとに物理コントローラを置かずに一元管理できる点が特徴です。
その他のアーキテクチャ
- FlexConnect:本社等に置かれたWLCが遠隔の拠点のAPを管理する方式です。クライアントデータ通信は、AP側(拠点側)で直接スイッチングするローカルスイッチング、またはWLCへCAPWAPで転送する中央スイッチングを選択できます。ローカルスイッチングを設定した場合は、WAN回線に障害が発生してWLCと通信できなくなっても、既に確立された拠点内のクライアント通信は継続できるという耐障害性があります。
- Cisco Mobility Express:小規模拠点向けに、専用のWLCアプライアンスを別途用意せず、AP自体にコントローラ機能を持たせる方式です。
APモード
軽量APは、動作目的に応じて、いずれか1つのモードで動作します。

- ローカルモード(local mode):クライアントへのサービス提供を主目的とする、最も一般的な標準の動作モードです。合間に他のチャネルのスキャンも行います。
- FlexConnectモード:前述のFlexConnectアーキテクチャで使われる、拠点側でのローカルスイッチングに対応したモードです。
- モニタモード(monitor mode):クライアントのサービス提供は行わず、周辺の電波環境の監視や、不正AP(rogue AP)の検出に専念するモードです。
- スニファモード(sniffer mode):802.11フレームをキャプチャし、無線プロトコルアナライザ(Wiresharkなど)へ転送して解析するための、トラブルシューティング専用モードです。
- ローグ検出モード(rogue detector mode):有線側でARPパケットを監視し、無線側で検出したクライアントMACアドレスとの照合により、有線LANに接続された不正APを検出・分類するモードです。
- ブリッジ/メッシュモード(bridge/mesh mode):AP間を無線リンクで接続してネットワークを拡張する(メッシュ構成の)モードです。メッシュ構成では、ルートAP(RAP)は有線LANに接続され、メッシュAP(MAP)はRAPまたは他のMAPに無線接続します。
- SE-Connectモード(SE-Connect mode):クライアントへのサービス提供は行わず、無線スペクトラムの解析を行うためのモードです。
このように、AP1台は同時に複数のモードを兼務するのではなく、いずれか1つのモードに設定して運用します。
WLANコンポーネントの物理接続
実際の無線LAN環境を構築する際、AP・WLC・スイッチが物理的にどう接続されるかを理解しておくことも重要です。
APとスイッチの接続
中央スイッチングを行う軽量APは、通常、有線LANスイッチのアクセスポート(管理VLAN用の1つのVLANのみ)に接続されます。AP自体は、CAPWAPトンネルを通じてWLCと通信し、クライアントの各VLANへの振り分けは、WLC側の設定に基づいてCAPWAPトンネルの中でカプセル化されて行われます中央スイッチングでは、クライアントのVLAN割り当てはAPの物理ポートの設定ではなく、WLC側のWLAN設定(インターフェイスマッピング)で決まる点が、有線LANのアクセスポート設定とは異なるポイントです。[1]。
一方、FlexConnectで複数のクライアントVLANをローカルスイッチングする場合は、AP接続先ポートをトランクポートとして設定します。
WLCとスイッチの接続
WLCは、複数のVLAN(クライアント用の各VLAN、管理用VLAN等)にまたがる通信を扱う必要があるため、通常はスイッチのトランクポートに接続されます。
LAG(Link Aggregation)
WLCは、耐障害性とスループット向上のために、複数の物理ポートをスイッチ側のEtherChannelと同様に束ねるLAG(Link Aggregation)という機能に対応している場合がありますWLCのLAGで使用するEtherChannel方式は、WLCの製品系列やOSにより異なります。AireOS WLCでは通常、スイッチ側を静的EtherChannel(mode on)として構成します。Catalyst 9800シリーズなどではLACPを使用できる場合があるため、対象機種の設定ガイドを確認してください。[2]。スイッチ側から見ると、WLCへの複数の物理リンクを1本の論理リンク(EtherChannel)として扱う構成になります。
設定の確認(WLC CLIでの参考確認)
WLANの作成・セキュリティ設定などの主な操作はGUIまたはCLIで行えますが、登録されているAPの状態は、WLCのCLIからshow ap summaryコマンドでも確認できます。コマンドの出力形式は、WLCのOSや製品系列により異なります。
WLC# show ap summary
Number of APs: 2
AP Name Slots AP Model Ethernet MAC Radio MAC State
AP-1F-East 2 C9130AXI-B 0062.ec21.6a80 0062.ec3f.9a20 Registered
AP-2F-West 2 C9130AXI-B 0062.ec21.7b10 0062.ec4f.9b20 RegisteredState列がRegisteredになっていれば、そのAPがWLCに正しく登録され、CAPWAPの制御接続が確立できていることを確認できます。FlexConnectでローカルスイッチングを使用する場合、クライアントデータ通信はCAPWAPデータトンネルを通りません。APがWLCに登録できていない場合は、まずAP・WLC間のIP到達性や、AP接続先ポートのVLAN設定を確認するのが基本的な切り分けの流れです。