無線通信の基本

無線LANは、ケーブルの代わりに電波(RF:Radio Frequency、無線周波数)を使ってデータをやり取りする技術です。電波は特定の周波数帯を使って伝送され、無線LAN(IEEE 802.11)では主に2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯の3つの周波数帯が使われます。

周波数帯が異なると、電波の伝わり方の特性も変わります。一般に、周波数が低いほど障害物を回り込みやすく伝搬距離が長くなる一方、高い周波数帯では無線LAN用により広いチャネル幅を利用できる場合があり、高速通信に有利になることがあります。

主な周波数帯の特徴

2.4GHz帯

2.4000GHz〜2.4835GHzの範囲を使う周波数帯です。障害物を回り込みやすく、比較的広い範囲をカバーできる一方、電子レンジやBluetooth機器など、無線LAN以外の多くの機器でも使われているため、混雑・干渉が起きやすいという課題があります。

2.4GHz帯では、20MHz幅のチャネルを使う場合、チャネルの幅同士が重なり合っています。そのため、日本や米国などで一般的に利用されるチャネルの中では、互いに干渉しない(重ならない)チャネルの組み合わせは1・6・11です2.4GHz帯で利用可能なチャネル番号は国・地域の規制によって異なります。1・6・11は20MHz幅で一般的に用いられる非重複チャネルの組み合わせです。[1]。

5GHz帯

5GHz帯は、5GHz付近の複数の周波数範囲を使う周波数帯です。利用できる周波数範囲やチャネルは国・地域の規制によって異なります。2.4GHz帯に比べて利用できるチャネル数が多く、混雑を避けやすいという利点がありますが、周波数が高い分、障害物に弱く伝搬距離は短くなる傾向があります。

6GHz帯(Wi-Fi 6E対応機器以降)

IEEE 802.11axを6GHz帯で利用するWi-Fi 6E対応機器以降で新たに利用可能になった周波数帯です。利用可能な周波数範囲は国・地域の規制によって異なり、例えば米国では5.925GHz〜7.125GHzの範囲、合計1200MHzという広い連続した帯域幅を利用できます。米国では20MHz幅のチャネルを最大59個取れるなど、重ならないチャネルを多数確保しやすく、より広いチャネル幅(80MHz・160MHz幅)を使った高速な通信もしやすいという特徴があります6GHz帯を利用するには、AP・クライアント端末の双方がWi-Fi 6E(またはそれ以降のWi-Fi世代)に対応している必要があります。また、利用できる周波数範囲は国・地域の規制によって異なります。従来の2.4GHz/5GHz帯にしか対応していない機器は、6GHz帯を利用できません。[2]。

サービスセットの概念

無線LANのネットワーク構成を理解するうえで欠かせないのが、次の用語群です。

SSID(Service Set Identifier)

無線LANネットワークの「名前」にあたる識別子です。クライアント端末が周辺の無線LANをスキャンした際に通常表示される、人間にとって分かりやすい名前です。SSIDを非表示にする設定では、スキャン結果にSSID名は表示されません。同じSSIDを、複数のAPが同時に広報することもできます。

BSS(Basic Service Set)とBSSID

インフラストラクチャBSS(Basic Service Set)は、1台のAPを中心に構成される、基本的な無線LANネットワークの単位です。インフラストラクチャBSS内では、クライアント同士の通信も含め、すべての通信が中心のAPを経由します。なお、BSSにはAPを使用せず端末同士で構成するIBSS(Independent Basic Service Set)もあります。

BSSID(Basic Service Set Identifier)は、そのBSSを一意に識別するための値で、通常はAPの無線インターフェイスのMACアドレスが使われます。同じSSIDを複数のAPが広報していても、AP1台ごとにBSSIDは異なります。

ESS(Extended Service Set)

複数のAPが、同じSSIDのもとで分散システムを介して連携し、1つの広いエリアをカバーする構成をESS(Extended Service Set)と呼びます。ESSでは、クライアント端末がAP間を移動すると、クライアントの判断により別のAPへ接続を切り替えるローミングを行えます。ローミング時には通信が一時的に中断する場合もありますが、利用者はAPの切り替えを意識せずに移動しながら利用できます。

アンテナの種類

APが電波を送受信する際のアンテナには、指向性の異なる複数の種類があります。

  • 無指向性アンテナ(omnidirectional antenna):水平方向のあらゆる方向へ、ほぼ均等に電波を送受信するアンテナです。カバーエリアはアンテナを中心としたドーナツ状に広がります。オフィスなど、複数のクライアント端末が四方に存在する一般的な環境(ポイントツーマルチポイント)でのAP設置に広く使われます。
  • 指向性アンテナ(directional antenna):特定の1方向に電波を集中させて送受信するアンテナです。無指向性アンテナに比べて、その方向への到達距離・信号強度を高められます。代表例に八木アンテナ(Yagiアンテナ)があり、離れた2拠点間を無線で結ぶポイントツーポイント接続などで使われます。

補足

  1. 2.4GHz帯で利用可能なチャネル番号は国・地域の規制によって異なります。1・6・11は20MHz幅で一般的に用いられる非重複チャネルの組み合わせです。 ↩
  2. 6GHz帯を利用するには、AP・クライアント端末の双方がWi-Fi 6E(またはそれ以降のWi-Fi世代)に対応している必要があります。また、利用できる周波数範囲は国・地域の規制によって異なります。従来の2.4GHz/5GHz帯にしか対応していない機器は、6GHz帯を利用できません。 ↩