なぜネットワーク運用にAI・機械学習が使われるのか
企業のネットワークは、拠点・機器・ユーザー数の増加や、無線LAN・クラウドサービス利用の広がりによって、日々大量の稼働状況データ(トラフィック量、無線の電波状況、機器のエラーログ、接続の成否など)を生み出しています。このデータ量があまりに膨大なため、人手だけですべてを継続的に監視し、異常の兆候を見つけ出すことは現実的に困難になってきています。
こうした背景から、近年のネットワーク管理製品(コントローラベースの管理プラットフォーム等)には、AI(人工知能)・機械学習(ML:Machine Learning)を活用して、大量の稼働データから自動的にパターンを見つけ出し、異常の検知や問題の予測を支援する機能が組み込まれるようになっています。
AIとMLの違い
- AI(人工知能、Artificial Intelligence):人間の思考・判断のプロセスを模した処理全般を指す、より広い概念です。
- ML(機械学習、Machine Learning):AIを実現する手法の1つで、あらかじめ人間がルールをすべて書き下すのではなく、データからパターンを学習することで、判断や予測を行えるようにする技術です。
つまり、MLはAIを実現するための手段の1つ(AIに含まれる概念)という関係にありますAIには、機械学習以外にも様々なアプローチが含まれますが、CCNA 200-301の出題範囲では、両者の大まかな関係(MLはAIの一種である)を理解していれば十分です。個々の機械学習アルゴリズムの分類(教師あり学習・教師なし学習等)の詳細はCCNAの出題範囲外です。[1]。「AI」と「ML」は日常的にはほぼ同じ意味で使われることも多いですが、試験では両者の包含関係(MLはAIの一部)を問われる可能性があるため、区別して理解しておく必要があります。
ネットワーク運用における具体的な活用例
ベースライン(正常な状態)の学習
AI・MLを活用したネットワーク管理製品は、まず対象のネットワークにおける「通常時の振る舞い」を、過去の稼働データから学習し、そのネットワーク固有のベースライン(基準値)を作成します。あらかじめ「しきい値はこの数値」と人間が固定的に設定するのではなく、ネットワークごとの実際の傾向に合わせてベースラインを自動的に調整できる点が特徴です。
異常検知(アノマリー検知)
学習済みのベースラインと、実際の稼働状況を継続的に比較し、ベースラインから外れた振る舞い(異常)を自動的に検出します。単純なしきい値超過アラート(例:「使用率が90%を超えたら通知」)と異なり、そのネットワークにとって普段と異なる状態かどうかという観点で検知できるため、無意味な通知(ノイズ)を減らし、本当に注意すべき兆候を見つけやすくする効果が期待されています。
予測分析(トレンド分析)
過去から現在までのデータの傾向(トレンド)を分析することで、無線LANの電波干渉の増加や、機器のオンボーディング(新規接続)の遅延、オフィスのトラフィック負荷の増大といった問題が、実際に発生する前に兆候を捉え、予測することを目指す取り組みです。
根本原因分析(root cause analysis)の支援
障害・不具合が発生した際、関連する大量のログ・稼働データを人手で1つずつ突き合わせて原因を特定する作業は時間がかかります。AI・MLを使うことで、関連しそうな事象を自動的に相関付け、根本原因の絞り込みを高速化する支援ができます。
Ciscoの製品例
CCNAの出題範囲は特定製品の細かい操作方法を問うものではありませんが、実際にどのような製品でこうした機能が提供されているかのイメージとして、Ciscoの例を挙げます。
コントローラベースの管理プラットフォームであるCisco DNA CenterCisco DNA Centerは、バージョンによって「Cisco Catalyst Center」という製品名に変更されています。試験対策教材では従来の名称「DNA Center」で記載されていることが多いため、本記事でもその名称で説明していますが、現在のCisco公式ドキュメントでは「Catalyst Center」という名称が使われている場合がある点に注意してください。[2]には、「Cisco AI Network Analytics」と呼ばれる機能があり、上記で説明したベースライン学習・異常検知・トレンド分析・根本原因分析の支援を行います。
補足
- AIには、機械学習以外にも様々なアプローチが含まれますが、CCNA 200-301の出題範囲では、両者の大まかな関係(MLはAIの一種である)を理解していれば十分です。個々の機械学習アルゴリズムの分類(教師あり学習・教師なし学習等)の詳細はCCNAの出題範囲外です。 ↩
- Cisco DNA Centerは、バージョンによって「Cisco Catalyst Center」という製品名に変更されています。試験対策教材では従来の名称「DNA Center」で記載されていることが多いため、本記事でもその名称で説明していますが、現在のCisco公式ドキュメントでは「Catalyst Center」という名称が使われている場合がある点に注意してください。 ↩